Albero
魔法が使えたらいいのに

学園時代 すごく短い
ロゼとウルリカへのお題は
【不器用な愛情 / 魔法が使えたらいいのに / 傷付く準備は出来ている】です。
#shindanmaker
https://shindanmaker.com/663099 2021/3/4脱稿



彼女を見かける度に目で追っていたのは無意識だった。含み笑いをしているユンに指摘されなければ気が付かなかっただろう。
似たような姿の学生は多いが、それでも彼女はひと目で分かる。揺れるたんぽぽ色が視界に入る度にハッとしてしまう。

「嫌っているんじゃないのか?」

隣で愉快そうにしているユンの問いにはすぐに答えられなかった。
自分だってそう思ってたはずで、だからこそ彼に言われるまで分からなかったのだ。ただ、自分が彼女を気付かぬうちに探していた事実だけが残る。

「嫌い、だ。あんな奴」

言ってみたものの、思いのほか違和感が残る。喉の奥でなにか大きな塊がつっかえているような感覚だった。

「そうか。嫌いか」

やっぱりユンは愉しげに言い、自分よりも数歩先を歩き出した。これ以上なにか言うつもりはないらしい。
指摘された事実と、自分の感情があちこちに散らばって纏まりを持たない。
ただ嫌いな相手に頭を悩ませるのも時間の無駄だ。ロゼはチラつくたんぽぽを振り払い、ユンの後に続いた。
この現しようのない感覚が分かる魔法があればいいのに、とらしくないことを考えながら。




彼を見かける度に、目で追っていたのは無意識だった。珍しく明るい声のクロエに指摘されなければ気が付かなかっただろう。
彼の空色頭と真っ黒なコートはよく目につく。視界の端に写っただけでハッとしてしまう。

「嫌いなんじゃないの…?」
「当たり前でしょ」

愉快そうなクロエの問いにはすぐに答えられた。
会う度に言い合って喧嘩して、果ては武器まで持ち出す。どんなタイミングであろうとそれは変わらなかった。
嫌味ったらしい言動を思い出すと腹の底がぐつぐつと煮える。むかむかしてきた胸の内を言葉にして吐き出す。

「あんな奴、大嫌いよ」

嫌悪を隠さないその言葉に、何故かクロエは満足そうな顔になる。長年の付き合いで分かるが、これは彼女が良くないことを企んでいる時のものだ。

「そう、嫌いなの…」

案の定、発せられた声は今までになく楽しそうなもので、背筋がヒヤリとする。このままでは望んでいない呪いに巻き込まれることは火を見るより明らかだった。
クロエがぶつぶつと何か言っていたが、それを問うのは得策ではない。ウルリカはその場から脱兎のごとく逃げ出した。
彼女の呪いを止めるための、強固な魔法があればいいのに、と思いながら。

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