Albero
伝わりますように

ウルリカエンディング後
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2024/9/22脱稿



ロゼから好きだと告げられた。
共同生活を始めてから早一年。もしかしたら好意を向けられているかもしれない、と感じる瞬間は幾度もあった。それをロゼが意図していたかどうか分からないが、恋愛に鈍いウルリカが気がつくのだから相当だ。
戸惑うウルリカに対してロゼはしばしの沈黙の後、首を横に振った。

「いい。お前に応えを求めてるわけじゃないから」
「じゃあなんで言ったのよ」
「……言うつもりもなかったんだ、本当は」

気まずそうに視線を逸らすロゼをウルリカは睨みつけるように見る。言うつもりがなかったことを言ってしまうとは、一体どういうことか。

「言われも、困るだろ。これからも一緒に生活するのに」
「そりゃそうだけど、言いたいこと言えないままなのもモヤモヤするじゃない」

そもそもロゼの態度からある程度の察しはついていたのだ。今更、という感情すらウルリカは持ち合わせている。

「なら、」

顔を上げたロゼはウルリカを真っ直ぐに見つめてくる。濃い藍色の瞳と視線が交わり、柄にもなくどきりと心臓が脈打つ。

「お前は応えてくれるのか?」

思わず怯んでしまいそうな程の視線の鋭さにごくり、と唾を飲み込む。
そうだ、言いたいことを伝えるということは、先ほどのロゼの言葉にウルリカが応えるということだ。ウルリカは、彼の言葉に向き合う必要が出てくる。

「……そうね、そうなるわよね」

藍色の視線に堪えきれず目を伏せると、瞼の向こう側でロゼが息を呑む音が聞こえた。作業をしていない静かなアトリエではそれが余計響く。
ロゼの気持ちは気が付いていた。本人から伝えられたことでそれが間違いでないことも分かった。ならば、あとはウルリカの気持ちだけということになる。
なんと、答えるのがいいのだろうか。どうすれば一番伝わるのだろうか。

(ううん、こんなの違う)

こんなふうに悩んでしまうなんてウルリカらしくない。ウルリカ達らしくないのだ。
伏せていた瞼を上げ、ウルリカは一歩踏み出す。そのまま勢いをつけて突然動き始めたウルリカに驚いているロゼの胸に目掛けて飛び込む。
ぎゅっとロゼを包み込むように腕を回す。戸惑うような気配を感じるが気にしない。
ウルリカはロゼの胸に顔を埋めたまま息を吸う。

「……なんか、なんて言っても伝わらさなそうだったから」

鼻からほのかな木々の香りが抜けていく。ロゼからはいつもこんな匂いがする。気取っていると感じることもあるが、今はこの香りが心地よい。
ぎゅっと回した手の力を強めるとロゼの体が少し強張るのが伝わってくる。何も言わないロゼに対してだんだん羞恥心が顔を覗かせてくる。顔が火照っているのか熱い。

「……そうか」

しばらくするとようやくロゼが口を開いた。そしてぎこちない動きでウルリカの背中に手を回し、控えめに引き寄せられる。
背中の手のひらから感じるロゼの体温は思っていたよりも高く、彼もまた熱を持っているのだと分かった。なんだ、ふたりとも同じなのか、と笑みが溢れる。
好きだ、とか、愛しているだ、とか、ウルリカにはよく分からない。
しかしこうして触れ合っている部分から、彼が大切なのだと、それだけ伝わっていればいいな、と感じたのだった。

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