ウルリカエンディング後
過去捏造 ちょっとアレな感じ
2021/1/6脱稿
「ねえ、神様っていると思う?」
突拍子もない問いかけに、ロゼはシャツのボタンを留めている手を止めた。
「なんだ、急に」
振り返って見れば、滑らかな素肌を晒したままのウルリカが不思議そうにこちらを見ていた。目のやり場に困り、つい視線を逸らしてしまう。
「なんとなく。あんたは信じてる?」
問われ、しばし悩む。
信心深いわけではないが、自分の思い通りにならない事態が起こった時は、怒りの矛先が神に向かうことはある。
かといって神に救いを求めている訳では無いので、頻繁に祈ったりはしない。
「どちらかというと、信じてない」
「そっか」
突然どうしたのだろうか。今度はロゼが不思議そうにウルリカを見ると、彼女は薄い毛布を引き寄せながらロゼの背中にくっついてきた。彼女の柔らかい腕が腰に回る。
猫が甘えるような仕草だ、と思い、体を捻って頭を撫でてやる。柔らかい金の髪がロゼの指の間を滑っていった。
「孤児院にいた時ね、事ある毎に祈りを捧げてたの」
きゅっ、と体に絡んだ腕の力が強くなる。
ウルリカの生い立ちを聞くのはこれが初めてではない。時折こうして、なんでもない時に彼女が話すのだ。
「教会が運営してる孤児院だったんだな」
「そう。でもね、わたし、これっぽっちも神様なんて信じてなかったから、それが苦痛でしょうがなかったの」
なんとも彼女らしい理由だな、と感じた。ロゼから見てもウルリカは信仰心が深いとは嘘でも言えない。
「だって神様がいたなら、どんな願いでも聞き届けてくれるじゃない。だからみんな祈ってるんでしょ?」
「全部が全部を叶えてくれるって訳では無いだろうが……」
祈りの内容は人によって、そして宗派によって様々なのでなんとも言えないが、大方は神に祈ることで何かをもたらしてもらう、というものだろう。
ウルリカが教会の孤児院でどんな祈りを、どんなタイミングで捧げてきたか分からないので、ロゼにはなんとも言えなかった。
「……どれだけ神様に祈ったって、マナの卵は孵らなかったし、両親も帰ってこなかったわ」
「……」
「だから、わたしは神様なんて信じない。欲しいものは自分で手に入れる方がずっとずっと大事よ」
センチメンタルな雰囲気になるかと思いきや、あまりにも男前な言葉にロゼの口元が緩む。気がついた時にはくつくつと噛み殺し切れていない笑いが漏れてしまっていた。
「ちょ、ちょっと! なんで笑うのよ!」
「いや、お前らしいなって」
体の前で結ばれているウルリカの手を解き、ロゼはウルリカの隣に寝転ぶ。
向かい合うと不服そうな新緑色の瞳がロゼを睨み付けていた。宥めるように頬に触れると、ほんのり薄紅色に染まる。
「俺も神様なんて居ないと思うけど、」
頬から手を滑らせ、ウルリカの後頭部に添える。自身の顔を彼女と鼻先が触れ合うほどに近づける。
「ウルリカに出会えたことは、ちょっと感謝してるよ」
驚きで目を丸くするウルリカを視界の端に捉えたまま、ロゼは彼女の唇を奪った。
柔らかい感触をしっかり堪能してから離れると、茹で上がった顔のウルリカがわなわなと震えていた。
「信じらんないっ……」
人が真面目に話してるのに、と言葉は怒っているが、耳まで赤いその顔ではいつもの迫力も感じられない。
今更口付けぐらいで、と考えてしまうが、些細なことで怒るのも含めて彼女らしさで、ロゼにとってはその全てが愛おしい。
「悪かった。次からはちゃんと許可を取るさ」
「そういうことじゃないの!」
言いながらウルリカはロゼの胸に顔を埋める。素肌に触れる彼女の頬は、どうしようもないほど熱く感じた。