エンディング後
ちょっとアレな感じ
2021/2/1脱稿
緩やかに上を向く目尻。その上に居座る長い睫毛もピンと天を目指している。
太腿あたりまで伸びた髪の毛は、活発に動く彼女に合わせて踊る。
じっと見つめられると吸い込まれそうになる新緑色の瞳は、いつだって生命力をを感じさせられる。
いつもは余計なことばかり発する薄紅色の唇も今は閉ざされている。そっと触れると、小さな隙間を見せた。
この行為に対して何も言わないが、瞳は何をしているんだとばかりに不満を訴えているように見える。
健康的な肌色をした首元から鎖骨をなぞり、視線を下に動かしていく。
すらっと伸びた腕、思っているよりも小さい手のひら、くびれた腰、そして艶かしい脚。全てが愛おしく、どこにも穢れなど存在していないかのように思えた。
触れると女性特有の柔らかさと、彼女の温かさと鼓動を感じる。間違いなく彼女がここに存在している、という確証が得られた。
何も言わずに体に触れられるのがくすぐったいのか、彼女は体を緩く動かす。背中の下のシーツが擦れる音がした。
唇から頬を指で辿っていく。見下ろす彼女の顔は赤く、包んだ頬は熱を帯びていた。自分の手のひらとの温度差が顕著になり、心地良さが広がる。
ちょっと、と不満が漏れて耳に届く。いつまで経っても彼女を見つめるだけの行為にしびれを切らしてしまったのだろうか。
新緑と視線が交わる。いつもの勝気な瞳も好きだが、今みたいに戸惑いを纏うその色も好みだった。
頬から手を離して、額にかかる金の髪の毛を顔の端へ寄せる。少し癖があるからか、一束だけ言うことを聞かない。
それすらも彼女らしさに思えて、そのまま小さな頭を撫でる。落ち着くのか、彼女は猫のように手にすり寄ってくる。
す、と自分を見上げる新緑が深みを帯びて、何かを訴えてきている。言葉にはしないが、これは彼女なりの合図だということを自分は知っている。
ゆっくりと顔を近付けると首の後ろに手が回った。鼻先がくっつくほどの至近距離で、彼女は得意げに笑う。それは照れ隠しの一種だ。
望むままに目を閉じて待つ彼女に唇を重ねる。触れ合った部分にじわじわと熱が集まり、二人の感覚を溶かしていく。
ゆっくりと味わうように唇を滑らせると、彼女が身じろぐ。今度はくすぐったいわけではないようだ。
うっすらと目を開けてみると、先ほどまで吸い込まれそうなほど開かれていた新緑は瞼の向こうに消えていた。ぎゅっと閉じられたそれにやたらと胸が高鳴る。
力が籠る朱唇の間を縫って舌を滑り込ますと、首に回された手がぴくりと跳ねる。唇とは反対に頼りなさげにその腕は首から滑り落ちて、自分の服を緩く掴む。
もう何度だって繰り返してきた行為に、彼女はいつだって慣れない仕草を返してくる。それが麻薬のように自身の中に溶け込んで、彼女に溺れていく理由になっていく。
入り込んだ口内は烈火のように熱く、絡ませた彼女の舌もまた同じように火を持っているかのようだった。
捕らえたそれを柔く吸うと、甘い溜息が漏れる。じわじわと強めると、合わせるように彼女が服を掴む力も強くなる。
彼女の感覚と溜め息を零す表情を堪能していると、隠れていた新緑が薄く現れ、自分の視線とかち合った。
あ、と言ったように見える顔になったかと思うと、一瞬にして彼女の顔が赤く染め上がる。まさか目が合うとは思っていなかったのだろう。
服から離れた手が自分の顔を掴む前に唇を離す。加速して飛んできた右手を掴み、見せつけるように指を絡めてベッドに縫い留める。
わなわなと震える林檎の様になった顔を見下ろし、更に自分の顔を目掛けてきていた左手も同じように掴んで口元へと引き寄せた。
ささやかな口づけを指先に落とすと、彼女は羞恥と困惑が入り混じった瞳でこちらを見ていた。
悪かった、と素直に謝罪を口にすると、少し間を置いてから、いいわよ、と返事があった。
許しを得たならもうこちらのものだ。さっさとこの先の甘美な時間に浸ってしまおう。そう決めて、愛しい彼女の胸元に口づけた。